季節を思う物
鰊の麹漬け この時期になると 毎年 村のどこからか貰う ニシンの麹漬け。 塩漬けした大根と 水で戻し 柔らかくなったニシンを 麹でつける。 家によっては白菜も一緒に。 安くはない乾燥ニシンを使う 贅沢な冬のおかずだ。 青森の麹漬けは りんごも一緒に漬け…
トミコさんから 赤い実があるけど 採りに来るか? と電話がかかってきた。 雪の降る数日前だ。 そこは明るい林道の側。 山帰来の赤い実が覗いていた。 8、9年履いている 皮の編み上げ靴の裏はツルツルで 坂を昇り降りする時に 見事に滑って転げ落ちた。 ズ…
紅葉 降り出した強い雨で 少し残っていた紅葉の葉 銀杏の葉は すっかり落ちるはずだ。 山の中を西から東へ流れる川の谷筋を 風が上ったり 下ったりする。 10代に読んだ ヘルマン・ヘッセの 「春の嵐」の最初に 荒々しい風の描写があった(様に思う)。 風…
水仙 会う人が皆 「寒いねぇ」と言う。 でも 薄いライトダウンを着れば なんて事はない程度の寒さだ。 毎日 広葉樹の葉が 風に吹かれ 踊るように落ちてくる。 それらの葉が重なった所に 瑞々しい緑の水仙が芽を出した。 12月の終わりから 3月の終わりまで…
樫の幼木の枝に 乗っかかるようにして 絡まっていたのは ガマズミの赤い実だ。 そして 私の履いているワークブーツの 足元に落ちていたのは 大きな黄色の葉っぱ。 強い北風 南風に吹かれて散り 山の中 道の脇に積もった 茶や 黄の葉っぱは 冬の始まりを語る…
枯れた黄色の紅葉。 表の机の上に落ちて来て 山陰から現れた 朝陽の強い光を浴びる。 風化途中の杉板の机に 鋭い影を落とし 風が吹けば 土の上に厚く積もった 紅葉の葉の上にふわりと重なるはず。 やがて 雨や夜露に晒されて 土に還る。 沈黙する静かな 枯れ…
紅葉(こうよう)の美しさは 夜と昼間の気温の寒暖差による。 昼間が暖かく 夜は凍える程冷たい。 そんな日が続くと 錦繍と呼ぶにふさわしい 山の彩りになるのだ。 茶色と黄色の山を見上げ 今年の気候はどうだったのかと思い返す。 道路の脇に吹き溜まった茶…
カガノアザミ 立冬 なんと早い季節の移行だったのか。 落ち着かない世情に振舞わされ続けた。 周りを見渡せば 濃い緑の杉の人工林 その上に 紅葉(こうよう)の広葉樹 そして 明るい青の空。 トンビの親子が 輪を描く。 下を見れば 茶や黄に色づいた落ち葉が…
冬苺 冬苺の赤い実は どの木苺よりも美しい。 透明感のある一粒一粒が 蔓に実っている。 夏の終わり 白い野茨のような 凛々しい花をつける。 その花を覗きながら 秋になる赤い実を思うのだ。 甘くて赤い実を根気よく摘み 木苺ジャムを作るのは恒例の仕事。 …
明るい茶色の葉っぱを 何枚も持ち帰る。 緑の時は 椿のような 厚みのある 光る葉。 虫に食われたり 強い風に吹かれたり 穴の空いた様 くるりと内側にカールした様。 水を入れた花器にそれらの葉を挿す。 琥珀色の葉の塊 2枚の枯葉 表は早い夕暮れで ライト…
ガマズミの実 アキノキリンソウ リンドウ 赤いガマズミの実が群れている 枯れかけた葉の間の 小さな実 鳥達が啄んでいるのを 見た事がない。 アキノキリンソウは 鮮やかな黄色 どこに咲いていても すぐにわかる。 淡い薄紫のリンドウと共に ポキポキと手折り…
貰った枝付き葉付きの柿。 ハサミで柿の実を切り取り 深い竹のザルに収める。 まだ青い実は 猿に食べられる前の収穫。 柿の香りを初めて感じた沢山の柿だ。 テーブルに竹ざるに入った柿を置く。 赤くなるまで気長に待とう。 日々 変わりゆく色の変化 熟れゆ…
土に還る前の朽ちた葉っぱの上に 黄色の葉っぱが重なる。 その葉を 指でつまみ上げ くるりと回し 裏を見れば 雨に濡れた土が付いている。 どこから来たのかと 木々の枝を見上げる。 山のどこかから ひらりひらりと落ちて来た その 黄色の葉っぱは 居場所を見…
月見草 秋の花は 今が盛り。 曇り空の下でも 晴天の下でも 控えめな彩りで咲いている。 「小屋」の周りでは 何本もの秋明菊が 白い花びらを揺らし 川へ降りる 細い道には 邪魔になるほどのミゾソバが群れて ボロギクは 広い原っぱを我が物顔で占領し 風に そ…
栗の毬(イガ) 道路脇に バラバラと散らばる栗の毬(イガ)は 見上げる山に根を張る あの栗の木からだ。 可愛い茶色の栗坊主を 抱き抱えていた毬(イガ)。 風の強い日に バラバラと落ちた。 晴れが続いた日々。 金星が輝き 星座も空に広がった夜 アスファ…
藪椿の実 細くて 背の低い藪椿の木。 それは タイチさんのよく手入れされた 庭にひっそりと立っている。 その木に はっと目をひく2個の赤い実。 早生のみかん位の大きさのそれは 柔らかな布で 丁寧に磨かれたかの様に 艶やかに光っている。 固い実だと鳥達…
どこからか飛んできた 枯れた葉を 一枚ずつ拾い集め 風化した椅子に並べる。 そして その 朽ちていく様を愛でるのは 毎年の秋の事だ。 枯れた葉の 緩やかなカーブ。 穴が空いたり 裂けていたりと 表情が豊かな秋の葉達だ。 赤い枯葉を見つけるのは 少し後だ…
朽ちた葉の間に顔を出すキノコは 鮮やかな黄色だ。 朝の陽の光を浴び 控えめに輝いている。 川の水音 鳥の鳴き声を聴き 時折走る車の音に 轢かれはしないかと怯えながら ここがいいのだと 明るい黄色の傘を広げた。 初めて見るキノコに 今朝出会った。
もらった茹で栗を コロコロと器の中に。 大きいのやら 小さいのやら。 山の中の 栗の木の下 茶色のイガから 顔を見せた栗の実を 軍手をはめた手で 一つずつ拾い・・・ といった情景が浮かぶ。 それを アルミの大きな鍋で茹で 上手くいったかな?と 試しに一…
カガノアザミ(加賀乃薊) 空気はからりとした 心地よい一日。 窓から入り込む緩やかな明るさ。 この明るさは 秋の色だ。 淡いピンク色をした 糸のような花びら 沢山の蕾をつけた 背の高い野生の花。 カガノアザミ(加賀乃薊)は 小屋の周りに 群れている。 …
作る工程は単純 簡単だが 毎年「面倒だなぁ」と 億劫に感じるのが紫蘇ジュース。 二抱えも 三抱えもある 根付きの紫蘇の葉をもらい 艶のある綺麗な葉だけを使う。 洗った紫蘇の葉の炊き汁に 砂糖とクエン酸を加えるだけ。 今年も6リットル出来た。 夏の汗だ…
朝晩の 寒いほどの冷気で 数日前から ストーブに薪をくべる。 半袖のTシャツの上に フランネルのシャツを着た。 うっすらと畳み皺のある軽いシャツ。 灰色の空と 頼りなげに風に揺れる芒の穂が 夏の盛りの 噴き出る汗の記憶を 忘れさせる。 知人がくれた 濃…
ゲンノショウコ(ピンク) 野生の花はどこからでも芽を出し そして 茎を伸ばし 葉をつけ花を咲かす。 憧れるほどの逞しさだ。 小屋の周りに咲き出した ゲンノショウコ。 「煎じて飲めばお腹の痛いのもすぐ治る。 だから『現の証拠』」 余りにも実利的な名前…
小屋の側 木の簡素なベンチの上。 朝霧が消えると 姿を現した 野ぶどうの枯れた葉っぱ。 まるで 撮って欲しいとでも言うように 台の上に 美しい姿で。 野ぶどうの青い実さえも まだ実っていないのに 群れた葉っぱが まだ青いままなのに。 一枚の小さな葉っぱ…
朝 小屋の扉を開ける。 眩い夏の終わりの 緑と光が目に飛び込む。 乾いた空気と冷気が心地よい。 夜露に濡れた 草は生き生きと。 咲き始めた ゲンノショウコの ピンクと白の花は いつも通りのかわいさだ。 小屋の前を走り去る 数台の車は 毎日 決まった時間…
ぽっかりと雲が浮かんでいる。 青い空を ゆっくりと姿を変え 楽しそうに流れて行く。 深い緑に覆われた山 蛇行する川 狭い畑や田んぼ 山の裾の 等高線に沿って 並ぶ農家を 下に見て 西から東へ旅する雲。 ふっと 目が合った雲と私は ほんのしばらくの時を共…
木星? 小屋の窓から見える南の空。 明るく輝く星は木星? 毎晩 カーテンを引くたびに見えるのは 星や 月の満ち欠け。 風の吹く日は 木のうねり。 雨の降る日は 木の葉や草の下で ひっそりと潜む生物の気配を感じる。 真っ暗な空の下には 街灯のLEDの眩しい…
私の頭上に 浅緑色のいがぐり坊主。 あたりをぐるりと見回すと あちらにも こちらにも。 夜から降り始めた雨にぬれて スッキリとした顔立ちの男の子。 指先でいがぐり坊主を トントンと叩く。 まだ チクリともしない。 夏から秋への移行は 静かに 抜き足差し…
時々 友達がくれるビワの実は 不揃いで 傷がある。 それを 水でざぶざぶ洗い 指で皮を剥き齧る。 酸味のある甘い果汁で 指が濡れる。 艶々とした明るい茶色の種が 小鉢の中に貯まる。 土に蒔いた沢山の種は 二つ三つと芽を出し すくっと伸びて葉をつけるのだ…
桑の実 いよいよ 桑の実が熟し始めた。 淡いオレンジ色から 濃い紫に変わると その実は 儚い甘さで ついつい 一つ 二つと摘んで食べる。 指が紫に染まり 多分 口の中も染まっているに違いない。 道沿いの木苺の実も 赤く熟れて 鳥と私との ちょっとした競い…