雪と雨の灰色の日。
灰緑色の
毛糸の帽子を被り
外に出る。
コローの絵の灰緑。
アイルランドのアラン編み。
私が そんなふうに
思っているとは誰も知らないだろう。
どこにでもある 普通の毛糸の帽子。
ビービーと鳴きながら
川面すれすれに飛び去るカワガラス。
シジュウカラ ヒヨの鳴き声も
山の中から響く。
そして
私を呼び止めた 墨色の小さな
雨の雫をまとった ウツギの実。
近づき雫の中にある 世界を見つめる。
小さく だが 深い世界だ。
鮮やかな赤の小さなトマト。
実を 指で摘み
口に放り込み 奥歯で噛み締める。
弾ける食感と 甘酸っぱい野生の味。
送られて来た箱に
菜花 キャベツ ほうれん草 八朔
そして ミニトマト。
温暖な地で
太陽の光をふんだんに浴びて育った。
ざぶざぶと水で洗い
鉢に入れ テーブルの上に。
はち切れそうに 皮が張り
軸の深緑の 鮮やかさ。
太陽の光と土と水で造られた
自然を凝縮した美しさがここに。
今日も昼間に 雨が降った。
毎日 同じように時が過ぎ
いつもの様に 動き 考え
特に 変わった事もない。
新コロナで
私は外出する事に臆病になった。
そして
仕方がないのに
心が文句を言っている。
カバンにお菓子とお茶を入れ
JRの在来線の電車に乗り
窓の外を見ながら
ちょっと そこまで旅をしたい。
同じ様に 臆病になった友達と
ビデオ通話で話をする。
それぞれが 何がしかの悩みを話す。
そして 最後には
雨や風から身を守る家があり
その中で過ごす事が出来る
ありがたさで終わる。
夕方
いつもの様に散歩をした。
雨が上がり
淡いピンクの雲が西から東へ。
空を見上げて思う。
私はこうやって「ちょっとそこまで」の旅をしているのだな。