桑の葉茶 蓬の葉茶

午前10時

山間の日の出は遅い。

山の後ろから太陽が顔を出すのは

9時を回ってからだ。

 

太陽が顔を出すと 白い霧が消える。

その霧と夜露で濡れた草木 土が

キラキラと光り 歩く私の靴も濡れる。

 

数年も前に植えた花の種が飛んだのか

あちこちに その花が草に混ざって咲いている。

例えばゲンノショウコ ツユクサの群れの中に。

 

そうだ 先日聞いたお茶の話。

奥の集落で 山野草や山菜に詳しい女性がいる。

彼女のお茶は 桑の葉を積んで乾燥させたもの。

一年中飲んでいると聞いた。

今の季節 ピンクや白のフウロのような

花を咲かせるゲンノショウコも摘んで乾かす。

胃腸の薬で重宝していると話す。

周りを見渡せば 漢方薬の宝庫の地。

その話を聞きながら 桑の葉茶には

興味が湧いた。

 

D.H.ロレンスの小説「息子と恋人」に

炭鉱夫の父親が毎朝仕事に出る前に 

梁に吊るして乾かしたヨモギを 煎じて飲む章がある。

半世紀も前に読んだ小説の中で

その場面だけをよく覚えている。