『昔の僕は 季節の移りかわりに本当の意味で
気づくことなく過ごしていた。街で生活していると
このすばらしい変化の兆候を読みとるすべを
なくしてしまうんだ。一方 自然に囲まれて
暮らしていると その特性にずっと敏感に
ならずにはいられない。
季節の変化には魔法のようなところがある。
ちょうど 地平線からちらっと顔をのぞかせた太陽が
夜の終わりと朝の始まりを意味するように
冬が終わったと感じる その瞬間を特定できるのだ。』
「ぼくはお金を使わずに生きることにした」
マーク・ボイル著の中の一章だ。
イギリスで 1年間お金を使わずに生活する実験をした
29歳の若者マーク・ボイル。
不用品交換で入手したトレーラーハウスに
太陽光発電パネルを取り付けて暮らし
半自給自足の生活を営む。現代の「森の生活」
と本の帯に書いてある。
私が花に顔を近付けて見る 空の雲を毎日仰ぎ見る
冬の季節から春の訪れをふっと感じる
空気の香り 冷たさ 纏わりつき。
雨 雪の後に 木々の枝の滴りが
日の光を通して キラキラと輝く様への驚き。
北から谷筋を走るように吹いてくる強い風
その時に唸る杉の人工林の不気味さ。
それを感じるのは
街から自然の中に身を置くようになってからだ。