クリスマスローズの蕾

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雪を被っていた

クリスマスローズの鉢を掘り出して

屋根の下に置いたのは

1月の始めだった。

 

空を渡る太陽が

少し高い所を動く様になると

小さな蕾が膨らんだ。

葉っぱもゆっくりと手を伸ばし

陽の光を掴もうとしている。

 

原っぱにはまだ厚い雪の層が残る。

禁欲的な白い雪の世界は

人間も含めた生物を

謙虚にさせる。

 

でも

春を前にした陽の光は

私の心にも体にも

ふつふつと湧く様な元気をくれる。

豆とトマトの缶詰

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原産国イタリアの

豆の缶詰を見つけたのは

業務スーパーの棚だった。

 

試しに買ってみたら

味も便利さも価格も

大変気に入った。

 

そして

イタリアだからと

何となく安心感があった。

 

今は豆缶を常時食材の棚に並べている。

 

昼ご飯のおかずに困った時。

パカッと開けた缶詰のひよこ豆

かわいい形と色だ。

薄く切った玉ねぎとベーコンを炒め

水とひよこ豆と水煮トマト

乾燥バジルを加えて煮る。

仕上げにチリペッパー。

 

又ある時は

玉ねぎ 人参 有り合わせの野菜

チキン胸肉 そしてミックスビーンズ。

コトコトとよく煮た後に

オートミールを一掴み。

チキンコンソメで味をつけ

とろりとなったシチューは

ほんの少しスコッチブロス風。

スープ皿に注ぐ前にチキンを裂く。

 

カットトマトの水煮と

卵3個をよく掻き混ぜ

塩 胡椒の味付け。

フライパンにオリーブオイルを垂らし

煙が出始める瞬間に

トマト入り卵汁を流し込む。

 

オリーブオイルの香りと

トマトの酸味の

オムレツが焼き上がる。

 

なにやかにやと

豆とトマトの缶詰には

お世話になっている。

冷たい雨の日を過ごした

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雪が消えた土から

ひょっこり頭をもたげて登場。

「やあ フキノトウじゃないか!」

まだ皮を被った小さな小さな

香りの固まり。

 

赤い実をつけたまま

雪の中で眠っていた

ヤブコウジ

 

冷たくしとしと降る雨が

積もった雪を溶かし

去年の枯れた草に

目覚めの声をかける。

 

3月の気候だとニュースでは

どこかの桜の開花を

知らせているが

灰色の空から降って来る

冷たい雨の日を過ごした私は

肩をすぼめて暮らしている。

木の胎動と地熱

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木の周りから雪が溶け始める。

それは

木が春を感じて動き始め

土が春の熱を帯びて来るから

と 聞いた。

 

木の胎動と地熱。

 

夜空に現れた大きな月も

柔らかい光を

雪の上に降らす。

 

シジュウカラが群れで飛び

うちの細い木の枝で

羽を休める。

 

久しぶりに見た夕焼け空。

霞んだ空に浮かんだ雲も

淡いピンクでたなびく。

 

一番寒い2月にかいま見た

春の兆しだ。

「今日も小雪の降りかかる」

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2月17日

 

「汚れっちまった悲しみに

今日も小雪の降りかかる

汚れっちまった悲しみに

今日も風さえ吹きすぎる」

   

汚れ始めた周りの雪は

今日降った雪で

それは美しい白の世界に戻った。

 

中原中也

「汚れっちまった悲しみ」

を思い出すには充分だ。

 

「汚れっちまった悲しみ」を

「私」に置き換えれば

全く違った詩の世界に変わる。

それはただの雪の日の描写だ。

 

そんな事を思いながら

足跡のない雪道を

靴跡を付けながら歩いた。

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汚れっちまった悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れっちまった悲しみに
今日も風さえ吹きすぎる

汚れっちまった悲しみは
たとえば狐の革裘(かわごろも)
汚れっちまった悲しみは
小雪のかかってちぢこまる

汚れっちまった悲しみは
なにのぞむなくねがうなく
汚れっちまった悲しみは
倦怠(けだい)のうちに死を夢(ゆめ)む

汚れっちまった悲しみに
いたいたしくも怖気(おじけ)づき
汚れっちまった悲しみに
なすところもなく日は暮れる……

   中原中也「山羊の歌」から

     「汚れっちまった悲しみは」

川の旅

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身も心も縮み上がる。

そんな川の流れだ。

 

澄み切った翡翠色の冬の川。

リズミカルな音をたて

小さな岩を越える。

 

走っているかと思えば

眠っている様にさらさらと流れたり。

 

急なカーブを

大きくうねりながら

川岸を削る。

 

治水ダムから

白いレースのカーテンみたいに

流れ落ちる。

 

そんな風にして

下へ下へ

東へ東へと流れ

琵琶湖に辿り着く川。

 

そして

大阪湾への長い旅。

 

太平洋を越えて

アメリカの浜辺に行き着くのはいつの事やら。

「お気をつけて」と言うのはちょっと変だな。

 

じゃあ

「どうぞ楽しい旅を!」

印象深い冬の描写

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イングランド田園讃歌」の中で

著者のスーザン・ヒル

オックスフォード郊外の古い家に住み

その村での出来事を綴っている。

 

四季の様々の出来事の中で

私が一番面白く読んだのは

冬の生活だ。

すっぽりと雪に覆われた夜。

分厚いコートとマフラーで

雪を踏み分け目的地まで歩く様。

 

「夢見つつ深く植えよ」での

メイ・サートン

ニューイングランドの田舎の古い家で

詩作と思索の生活を送る。

深い雪の降りしきる中 車を運転して

郵便局まで手紙を受け取りに行くサートン。

 

ローラ・インガルスの「大草原の小さな家

小さな家シリーズの中で

私が特に面白く読んだのは

「長い冬」上下巻だった。

アメリカの歴史に残る−40℃の大寒波の年。

深い雪と凍える家の内と外の

家族の生活を逞しく描いている。

 

深い雪の中

遠方からやって来た知人の

ホームメイドのバターのお土産。

カチカチに凍ったバター。

大喜びする家族と共に

私まで嬉しくなった。

 

様々な本の中で

私にとって印象深いのが冬の描写だ。

 

と言う私の冬は?

 

目覚めた時の

朝日に輝く白い世界に溜息をつき

又ある時は

恐怖で身をかがめたり

動物の死を目の前にして

緊張しながら生きている。