鹿の足跡

 

激しい雷雨の夜が明け

雨水を吸った湿った土の上に

しっかりとした 足跡を残し

歩いていたのは誰だ?

 

山の中から 時折

金属音の様な声を響かせている 鹿の足跡だ。

 

険しい崖に 力強く蹴り上げ道をつけ

「ああ これが獣道なのか」

と 私を感心させる事も度々。

 

まだ 車も通らない薄明に

川沿いの道を歩き どこに行ったのか

足跡は 突然消える。

 

星が消え 鳥たちが鳴き始め

鹿は山に帰る。

人の動き始める前の 動物達の世界を

早起きをして この目で見たいと思う。

 

 

自家製茹で餃子

 

強力粉に熱湯を回しかけ よく捏ねる。

艶が出てきたら

布巾をかけてしばらく寝かす。

 

中身というか 餡はあるもので作る。

冷凍豚肉を解凍し 包丁で叩いてミンチ状に

あとは 小松菜 人参 生姜はみじん切り。

にら ニンニクは使わない。

醤油を回しかけ ごま油を少し垂らす。

粉末コンソメ 胡椒もぱらりと。

よく混ぜ合わせよう。

 

皮を伸ばして 餡を包む。

ひだの細かさも気にしない。

 

熱湯に15個ずつ 2回茹で

熱々を大鉢に盛っていく。

 

たれは簡単に いつもの様に。

麺つゆ チリペッパー 

粉末コンソメは少しだけ 

ごま油 酢を混ぜる。

 

艶と弾力のある皮に包まれた餡。

真ん中を箸で切ると

じゅわっと出てくる肉汁。

 

プロの味ではないが

家庭の味だといえば格好がつく。

家で食べる餃子は 殆どこんな風に

自分流に作っている。

山の端に 太陽が隠れたら

午後4時半ごろ

夕方 山の端に太陽が隠れたら

すっと 空気が冷たくなる。

最後の輝きを残す 明るい空。

 

トラツグミの寂しげな鳴き声が 山間に響く。 

今年のトラツグミは 「寂しいんだよ〜」と

訴えかける様に鳴く。

 

そして 暗くなれば

いつものように ストーブに薪をくべる。

小屋の中が ふっと暖かくなり

居心地のいい空間になる。

 

毎晩同じ事の繰り返し。

この変化のなさが 日々安寧の証しだ。

福井 若狭町

福井 若狭町 午前11時

昨日 5月の美しく晴れた日。 

小浜への行き帰りの豊かな景色は

日本の原風景を見るようだった。

 

稲の苗が 几帳面に植わった田んぼ

その横には 明るい黄色の

刈り取りを今かと待っている小麦畑。

田んぼには 青い空と白い雲が映る。

 

多分 夏の終わりだと思う

この辺りには白いそばの花が咲く。

 

私の住んでいる山間部の集落は

米を作るのをやめた休耕田に

ススキがが生い茂り

限界集落をより寂しく見せている。

 

耕作放棄地に 

麦を 大豆を そばを植えよう。

若い農業従事者が やりがいを感じる農業に。

食を外国に頼るのを少しでも減らそう。

 

こんな声をメディアでも聞く様になった。

毎日の生活の中で 数分でも考えてみたい。

小浜(おばま)港で魚を買う

福井 小浜港

夫のチェーンソーの不具合で 小浜へ。

私も車に同乗した。

 

薪を作るのに常時使っているチェーンソー。

夫はまるでお医者さんに行く様に 

具合が悪くなれば

小浜港のすぐそばの 木戸商会に行く。

車で約1時間少しの距離だ。

 

部品が壊れているのを取り替えてもらった。

ストレスが一気に吹っ飛ぶ。

 

私は港の水産市場へ行くのが目的で

新鮮で綺麗な連子鯛四尾 鰤の切り身4切を買った。

合計¥900。

 

 

連子鯛

腐っても鯛と言うが

新鮮な鯛の美しさは特別に感じる。

淡いピンク色 そして 透き通った目。

 

出刃包丁でガリガリと鱗を剥がし

内臓を取り出し 切り目を入れる。

 

生姜の薄切り 醤油 砂糖 少しの酒と水。

沸騰した所に滑り込ませ アルミホイルをかぶせ

コトコトと 美味しそうな淡い醤油色になるまで炊いた。

 

ふっくらとした身と よく沁みた甘辛い醤油味。

 

素材の良さで 本当に美味しく出来た。

小石の写真

小石

スボンのポケットから取り出したスマホ

それで ただ撮っただけの写真で 

たまに 好きだなあと思うのがある。

 

小屋の北側の谷にかかる 

何の変哲もない 車がすれ違う狭い橋。

 

その橋の欄干に

私が ある目的で並べた 小さな石が10個。

人間の長い歴史より もっと前に生まれた石が

この小さな石になったのか?と思うと

チョコレートのひと欠け程の石が

急に存在感を現し始める。

 

スマホで撮った小石は

川向こうの杉の人工林を背に 

汚れた橋の欄干の上で 静かに並び

私に「いいなあ」と褒められ

目を伏せたような姿で写っている。

紅空木(ベニウツギ)

紅空木(ベニウツギ)

蜜蜂がどんなに喜んでいるだろう。

今年のベニウツギの花は「満作」だ。

 

道路沿い 山の中 

淡いピンク色の釣鐘状の花がたわわで

甘い香りを振りまいている。

 

山里の五月に 

この花を愛でる事の贅沢さ。

 

小さな花が群れる可愛さとは違う

ダイナミックな木に咲く花達。

 

小屋の周りは 

藤の薄紫 ガマズミの白 ピンクの紅ウツギ。

深い雪の後の まだ肌寒い日々の中で

今年は特別に美しいと思う。