「もう雪は降らんだろう。2月も終わりやから」
と 人は言う。
雪が窓の外に壁の様になり
車をそろそろと走らす。
そんな 冬もあれば
今年みたいに 雪の少ない
暖かい年もある。
ああだこうだと言うのはやめよう。
自然の行いは 私たちにはどうする事も出来ない。
冷たい色をした
川の縁に並ぶ楢の木々。
空に向かって 伸びたい。
私にはそんなふうに見える。
繊細な細い枝が
淡い緑の葉っぱで覆われるのは
もう少し先の事だ。
小さなピンクの花だったはず
加賀のアザミ。
山の崖に根を張り
ゆらゆらと揺れる。
今は
渋い色の萼と生成の糸の様な花びら。
その美しさは 深い輝きを放つ。
暗い灰色の空の下で
地味に美しく下を向いている。
川の色が鉛色なのは
きっと 空の色を映しているからだろう。
暗く 寂しい川べりを
ぶらぶらと歩いているのは
物好きな私だけだ。
さて
今日も私は
白のペンキを塗った。
仕事場の汚れた壁。
ローラーや刷毛でスースーと撫でると
黒く汚れた壁が 明るく変わる。
脚立に乗って 天井 壁の上部
しゃがんで 壁の下部。
マスキングテープを貼った 窓の枠。
天気の悪い中でする作業は
荷物を動かしては ペンキを塗り
又 荷物を動かしては こちらを塗り。
ぎっくり腰に要注意。
白く 明るく変わっていく空間。
それが 完成に近づいていく昂揚感。
物を作り上げる作業は
ペンキを塗る事でさえも 充実感を覚える。