こんな所によく花が咲くものだ
と、思う時がある。
岩に貼り付いた様に立つ木も同じ。
道路から小屋のドアまで
数段の石の階段。
ここにも毎年沢山の
黄色い花ウマノアシガタが咲く。
石の隙間のほんの少しの土に。
光を浴びたり
風に吹かれたりして揺れている。
岩を被う苔から芽を出した木。
細い 細い木に
手のひらを広げた様な葉っぱの
逞しい植物達が繁茂したり
去年群生していた蘭が
すっかり消えてしまったりと
自然の不思議に
驚く日々だ。
山里や田舎の植物や木には
ちゃんとした存在の意味がある。
家の周りの梅の木は梅干し。
甘い柿はおやつ
渋柿はおやつと正月飾りの干し柿。
ワラビ、ゼンマイ、蕗は冬の保存食に。
塩で漬ける。
山椒の木は鯖のなれ鮨には欠かせない。
そして山には楢の木。
これは
囲炉裏の薪や炭に。
どれもこれも
今は昔の話。
生活の為の知恵として
ずっと受け継がれて来た
植物との共存。
うちに植えてある木を見ても
集落の人は当たり前の様に
「これは食えるんか?」と聞く。
「食」が生活の中心であったかが
よく分かる言葉だ。
誰も伐らなくなった楢の木は
春の山を美しく彩る。
淡くて白っぽい芽吹きの葉っぱ。
太陽の光を浴びて
風に揺れる楢の林。
青空の下で
美しい。
チャックの小屋の側の
細い枝に満載の
赤や黒い実。
それが山桑の実だと知ったのが
去年の夏だ。
そして
うちの小屋のすぐ側の
無作法な枝振りの邪魔な木
それも山桑だった。
強く降った
雨の雫にまとわれ
初めて実を付けた
黄緑の山桑の実。
「おやおや 初めまして」
熟れて赤や黒くなるのを楽しみに
日々その成長を仰ぎ見よう。
甘酸っぱい実が
上手く採れたなら
ジャムにしたり
そのまま食べたり。
自然は厳しい仕打ちをする時もあるが
こんな風に
とても楽しい贈り物をくれる時もある。