小さな青いみかんが届く。
段ボール箱にびっしりと三重から。
木のボウルに盛られたみかん。
カーテンを少したぐり寄せ
黒い夜空を見る。
視線の先に輝く白い月。
北風の強い日だった。
会う人は皆
「寒いねぇ」
壊したくない
穏やかで平和な日常。
トミコさんのさつま芋の蔓。
雨の昨日。
夕方にひたすら皮を剥いだ。
皮の無くなった淡い緑の茎を
ポキっと折っては
小さいブルーのプラスチックの洗濯桶に
ポイッと放り込む。
大きめの鍋に溢れる程の
翡翠色の茎。
グラグラと炊いていると
湯が灰汁で黒く変わる。
ざるの中のゆがいた茎。
鍋の中に茎と
砂糖、醤油、鷹の爪と水を入れ
ひたすら甘辛い汁が無くなり
量が半分になる迄煮詰める。
最後に少しの酢を加える。
人様に振る舞いたいと思う程の
料理好きではない。
灰汁で黒く染まった指先と
親指と人差し指の爪の間の痛みと汚れ。
さつま芋の茎煮も
誰かが作ってくれるのなら
とても嬉しい。
出来上がった茎煮を
小分けにしてジップロックの袋に入れる。
三つは冷凍庫に
一つはトミコさんに。
「こんなにようけくれるの〜?
一人やからちょっとでええよ」と
トミコさんはいつも言うのだ。
小雨の降る
朝の9時に家を出て
午後の
空も雲も美しい琵琶湖岸を車を走らせ
帰って来たのが夕方の5時半。
夜
チャックの小屋に泊まっている
スイス人のカミルが
メキシコ人のアルトゥーロとやって来た。
アルトゥーロが帰国する。
日本に来る前に
それぞれの土地に一ヶ月やら2ヶ月逗留した。
写真家のアルトゥーロの「商売道具」の
高いカメラをタイで盗られたり・・・とかの
それはそれは色々なエピソードを聞かせてもらった。
ここでは
「天の川を撮れた」
帰りはミラノに寄ってからメキシコに帰る。
一人旅は若い時でも年をとってからでも
いつでも出来る。
でも
一年近く家を離れる長い休暇は
やはり若い時のものだ。
半月程前に帰国した
アメリカ人のショーン。
そしてアルトゥーロに
マグカップをプレゼントだ。
山の中の小さな小屋でご飯を食べて
ワイワイと話した思い出に。
「元気でね」
午前7時
山の峰の向こうから顔を出す太陽。
八月の頃より
随分と南からのお出ましだ。
木の葉っぱや草の先の朝露の輝き。
もうすぐ10月なのだな。
日の出がもっと南に移ると冬が来る。
朝
窓のカーテンを開けると
夜の間に降った雪で一面の白い世界。
嬉しい様な
しんどい様な・・・
そんな冬の始まりを思う。