ゼリーと蜂蜜と色鉛筆

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Made in Switzerland

 

19才の誕生日。

もう遠い昔だ。

 

私は松本駅で降り

ユースホステル近く迄行くバスに乗り遅れて

山の中の道を息をきらして歩いていた。

 

道に面した小さな家からおばあさんが出て来て

「お茶でも飲んで行きなさい」と言った。

 

リュックを下ろして玄関に座り

出されたお茶を2杯飲み干した。

セロハンに包まれた色とりどりのゼリー。

 

「どこから来たの?」とおじいさんが尋ねる。

「大阪です」と答えると

「自分達も大阪に住んでいたんだ」と言う。

 

別れ際にゼリーを紙に包んで持たせてくれた。

そのゼリーの色を何十年も経った今でも忘れていない。

 

19才の私がおじいさん、おばあさんと思った夫婦は

今の私よりずっと若かったのではないか。

 

 

チャックの小屋に泊まり

畑仕事を手伝っている

旅の途中のスイス人のカミル。

 

何回か顔を会わす内に

うちの前で立ち話をするようになった。

薄暗くなっても帰ろうとしないので

晩ご飯を一緒に食べた。

 

数日後にニコニコしてやって来た。

お母さんが採った自家製蜂蜜と

スイス製の色鉛筆のお土産を持って。

 

静かすぎる山の中の夜。

小屋の中で寂しかったんだそうだ。

天ぷらとサラダをタラフク食べて帰った。

 

日本の後は

友達に会いにニュージーランドに行く。

そしてスイスに帰って

又お金を貯めて日本に来ると言う。

 

又おいで。

私のゼリーの思い出と

カミルの山の中の思い出は

疲れた時の一杯の水だ。