木の器

 

何年も 薪棚のすみに 埃を被っていた木の器。

それは 夫の友達が

ストーブの焚き付けになる木端をくれた時

その中に混じっていたものだ。

 

紙の様に軽く薄い 手のひらに載るほどの小ささ。

底には「鴨社」と焼印が押してある。

下鴨神社のすぐ近くに住む友達の家が

葵祭の時に使った神事の器かもしれない。

 

私はそれを手のひらに載せ

「焼いてしまうには勿体無い」と思った。

 

漆が塗られていない 素のままの器。

さっと水で洗い 布巾で拭き 乾くのを待った。

 

そして オリーブオイルを布に浸し

軽く力を入れて 綺麗に塗った。

そして もう一度乾拭きをすると

木目も美しい 艶と深みのある器になった。

 

40年ほど前に買った木のスプーンも

オリーブオイルを塗り 乾拭きをした。

 

重ねた器にスプーンを入れ 棚に載せた。

クッキーやチョコレートを入れてもいいが

眺めるだけでも 心が喜ぶ。