森茉莉の染み

f:id:URURUNDO:20210623222232j:plain

 

20代の頃

私は森茉莉の本を何冊何冊も 熱心に読んでいた。

 

森茉莉の書く 森茉莉の生活。

10代に行ったベニスの運河の色を

コカコーラのガラス瓶の色であったと話したり

風呂もないアパートの 狭い一部屋でする料理の

目玉焼やオムレツでさえも 

その色や 味を語る「贅沢貧乏」

 

森鴎外の娘として生まれ

良いものを沢山見て育ち

独特の審美眼を身につけた

変な少女の様なおばあさん。

 

今日 私は

冷蔵庫に残っていた茄子を素揚げした。

それに辛子醤油をかける。

それを見ながら 色を 醤油との相性を

頭の中で思っている自分に気がつく。

 

引っ越しの慌ただしさの中で

無くしてしまった森茉莉の本。

 

でも 二十歳の私に染み付いた森茉莉

簡単には消えないほどの

シミとして残ってしまった。