杉のおひつ

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杉のおひつ。

赤銅の輪っかで締めてある。

 

30年程前

姉にもらった。

 

炊きたてのご飯をおひつに移し

しばらく使っていた。

束子で洗い よく乾かし

大切にしていたが

内側が黒くなってしまった。

 

しまい込んでいたそのおひつを

何十年振りかで出した。

焼いたパンを保存するケースとして。

 

おひつの蓋を開けるたび

イーストの香りが立つ。

乾燥もしない。

 

冷凍庫に入れておくより

パンもおひつも喜ぶだろう。

 

天然素材のものは

どんな所にも馴染む。

 

「ずっとここに居ましたよ」

という顔をして

鍋の横に喜楽な風情で鎮座している。