朽ちた木っ端

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湿った土の上に 重なって数年。

チェーンソーで切った 雑木の木っ端

軍手をはめた指で そっと裏返した。

 

現れたのは 白と焦げ茶の

力漲る木の造形だった。

 

人の感性と同じ数だけ 美しさの感じ方がある。

私は この朽ちた木っ端を見た瞬間

「おお!」と 心が躍った。

 

木の椅子に そっと載せ 写真を撮った。

そして

指で摘んで持ち上げ

腐った木の細くて厚い皮を めくった途端

バラバラっと 砕けた。

 

白と焦げ茶の薄い板になった 朽ちた木っ端。

私の足元にパタリと落ちた。

輝かしい朝

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9月27日 朝

 

太陽が 山の後ろから顔を出すと

数メートル先を隠す霧が 一気に消えてしまう。

 

そして

霧の置き土産の たっぷりの夜露が

色の変わり始めた葉っぱの先から

ぽたりぽたりと 滴り落ち

足元の草は 靴の先を濡らす。

 

輝く緑 川のせせらぎ

道を走り去る自転車の音 車の音。

鳥達や秋の虫の声。

 

生活の音も 自然の音も

広がる空に 軽い音を立てながら吸い込まれて行く。

今日もそんな輝かしい朝が始まった。

質素な農具小屋

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うちから8キロ離れた国道から

数メートル上った所にある

打ち捨てられた 小さな農具小屋。

 

欅が大きく枝を広げた影の下

錆色の小屋は

気持ちの良い秋風と光を受けている。

 

ゆらり ゆらりと揺れる欅の枝

紅い蓼の花は俯き加減

近くを通り過ぎる 車の音も遠くに聞こえる。

 

ぶらりと歩いていた時に

ふと目に留まった 質素な小屋は

そんな長閑な風景の中に立っていた。

枯葉を並べる

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どこからか飛んできた 枯れた葉を

一枚ずつ拾い集め

風化した椅子に並べる。

 

そして

その 朽ちていく様を愛でるのは

毎年の秋の事だ。

 

枯れた葉の 緩やかなカーブ。

穴が空いたり 裂けていたりと

表情が豊かな秋の葉達だ。

 

赤い枯葉を見つけるのは 少し後だったのか?

今朝 私が拾い上げたのは

アルパカの毛糸色をした葉ばかりだった。

黄色のキノコ

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朽ちた葉の間に顔を出すキノコは

鮮やかな黄色だ。

 

朝の陽の光を浴び

控えめに輝いている。

 

川の水音 鳥の鳴き声を聴き

時折走る車の音に

轢かれはしないかと怯えながら

ここがいいのだと

明るい黄色の傘を広げた。

 

初めて見るキノコに

今朝出会った。

茹で栗

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もらった茹で栗を

コロコロと器の中に。

 

 

大きいのやら 小さいのやら。

山の中の 栗の木の下

茶色のイガから 顔を見せた栗の実を

軍手をはめた手で 一つずつ拾い・・・

といった情景が浮かぶ。

 

それを アルミの大きな鍋で茹で

上手くいったかな?と

試しに一個食べたに違いない。

 

 

薄いカーテン越しの

柔らかな 朝の光を受けて

艶々と光る栗は 美しい栗色。

 

秋の味覚は 地味な味と 

造形の美しさだ。

桜の木のスプーンとバターナイフ

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私が毎朝使う スプーンとバターナイフは

桜の木で出来ている。

 

小屋の近くの山で

何年生きたか知らないが

薪用にと貰った 桜の木だ。

 

切り口から 甘い香りを放ち

燃やしても 小屋中に

香りは充満する。

 

その桜の木で

夫がスプーン フォーク バターナイフ等を

作ったのはもう何年も前になる。

 

それ以来 私たちは

何年も 毎朝 毎朝

桜のスプーンでヨーグルトを食べ

桜のバターナイフで

こんがり焼けた

熱いパンにバターを塗る。

 

欠けた皿の上に 行儀良く収まった姿は

慣れ親しんだ 朝の景色だ。