「チャックさんが、洗濯物を入れずに帰った」
と、バスに乗ってる人達が教えてくれる。
畑仕事で汗まみれになったズボンやシャツを
川で洗って、干して
そのまま京都に帰る。
夜露に濡れても
雨に降られても
全然気にしない。
そんなチャックが
精魂込めている畑の野菜。
「おいしいキュウリが食べたいのに
全部食べられた。
ハクビシンかも知れない」
少し離れた畑のトマトは猿に。
カボチャやさつまいもも。
畑を覆っているネットを張り直し
穴あきを繕いと辛抱強い
大男のチャック。
「チャックはシジフォスだね」と上手く慰められない私。
「ホントに僕はシジフォス」と情けない顔のチャック。
今は薄緑のひげのトウモロコシの上に
赤いネットが張られた。
猿と「チャックさん」の知恵比べ。
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ギリシャ神話のシジフォスは神々を二度までも欺いた罰を受けることになった。
彼はタルタロスで巨大な岩を山頂まで上げるよう命じられた(この岩はゼウスが姿を変えたときのものと同じ大きさといわれる)。
シジフォスがあと少しで山頂に届くというところまで岩を押し上げると、岩はその重みで底まで転がり落ちてしまい、この苦行が永遠に繰り返される。
このことから「シジフォスの岩(the stone of Sisyphus)」「Sisyphean labor」の語は、「(果てしない)徒労」を意味する。
(参考ウィキペディア)