怪談よりも怖い話

午前7時半 「ヒルに血を吸われた。 タラコみたいに大きいやつに」 と、タイチさんが騒いでいた。 私も数日前 ズボンの裾のシミに気がついていた。 足首に血の固まりと血の跡。 うちの集落はヒルがいないはずだった。 でも最近 知らない間に腕にくっ付いてい…

「みかんでも食べてゆっくりしてよ」

愛媛産 みしょうゴールド 「果汁たっぷり ジューシー感覚」だって 姉が送ってくれたみかん。 グレープフルーツみたいな さっぱりとした甘い果汁。 能書きに偽りなしだ。 いつも野菜をもらう トミコさんにお裾分け。 柑橘類が大好き。 夕方京都から帰って来た…

かわいいな・・・

集落の庭に 必ず植わっている花 百日草。 仏壇に供える為に それは沢山の花が 咲いている。 苗を貰って植えはしたが 「地味な花だな」 少し大きくなると 油かすをやる。 又少し大きくなる。 蕾は出たか? お、開きかけたぞ! 咲いた花達を 少し離れて眺める。…

お客が二人

午後4時半 朝 表に出るとむっとする様な 重い空気感。 何をしても汗が吹き出る。 昼前に 表に車の止まる音がする。 山仕事をしている 「弟君」がやって来た。 素麺と スペインオムレツと 塩揉みのきゅうりを胡麻油で和えたもので 昼ご飯を食べた。 「弟君」…

失敗作の「きゅうちゃん漬」

午前6時20分 2日前 トミコさんから「きゅうりを取りに来て」 と言う電話。 そのきゅうりで 「きゅうりのきゅうちゃん漬」を 作るはめになった。 トミコさんがくれたレシピは JAが配ったものだ。 レシピ通りに作ったきゅうちゃん漬は 余りにも醤油が勝ち…

西日を受けた白い家

午後5時 図書館で本を受け取り 新聞を読み 表に出ると五時だった。 太陽が沈むにはまだ早い時間 西日が強い。 道の駅、図書館の駐車場に 車はちらほら。 空が広いなあ。 西日を受けた白い家。 東ヨーロッパかロシアみたいな色をした 除雪ブルドーザーの車庫…

海への長い旅

鮎やアマゴのいる川。 うちの裏を流れる川だ。 「ほー、それはすごい」 と、驚くのはまだ早い。 漁業組合が 軽トラに魚を積んでやって来て 釣るのにいい頃合いのを流すから。 「鰻の大きいのがとれた」 と、奥の集落の人が言っていた。 これは天然鰻だ。 琵…

跳ねる鮎

水の少ない川だけど 今年もやって来る 鮎を釣る人達。 この川に沿った道を歩く。 川面をキラキラと走る光。 そして 跳ねる光。 それは 鮎のジャンプ。 「釣れますか?」と聞かれる。 「いますよ」と答える。 午後に雷のBGM付きで 大雨が降った。 雨は山や畑…

白く輝く光の束

午前6時40分 見慣れた風景も 一度として同じ時はない。 朝の7時前。 まだ 空気は冷たく 草の上の露も乾かない。 山の向こうから やっと顔を出した太陽。 白く輝く光の束。 「おう!」と私の心が唸る。 静かな山里が 眠い目をこすりながら ゆっくりと動き…

マムシの心臓

タイム (Thyme) 「マムシの心臓を9回食べた」 と話すのは90歳のオチヨさん。 山の中へスタコラ入り ワラビや栃の実を採る。 家族の朝食の準備をし 洗濯機を回し その後午前中に サツマイモの苗を200本植える。 マムシを捕まえて ピッと裂き 心臓をパク…

賞味期限日の栃餅

餡入り栃餅と餡ころ栃餅 カワイさんは 栃餅で儲けて まるで旅館の様な大きな家を 高台に建てた。 それは 山の中の田舎道から よく見える。 この村で 昔から作り続けてきた栃餅を 2、3の道の駅に出している。 賞味期限が近づいた栃餅は カワイさんが車で村…

熊にばったり出会ったら

裏の川 「オイッ!」 とタイチさんが叱った。 立ち姿で 杉の皮をはいで 食べていた熊。 声に驚いたのか ああ、面倒だなと思ったのか どちらかは知らないが 大人の熊はのっそりと 山の奥に消えたそうだ。 杉の皮まで食べるとは。 甘い蜂の巣も 木苺もないの?…

図書館の裏

休日の 図書館の裏は 賑やかだ。 道の駅で買い物をして 「ちょっと裏の土手まで」 なんだろうね。 緑濃い桜並木の下。 双眼鏡で鳥を観る人 走る子供 写真を撮る人 カフェに座って山を見る人。 そして私は 山の上に広がる 白い雲にため息。 あの雲の下は 琵琶…

シャクナゲ(石楠花)

午後2時 住む人が いなくなった家へと続く 山の坂道。 そこを 十歩程上がった所。 ミツバツツジの 淡いピンクの花が 群れているその奥に シャクナゲが たっぷりと豊かな花をつけている。 このシャクナゲの事を 村の誰かに話すとしよう。 「ああ、あれはな・…

新しいベンチ

表のベンチが みすぼらしくなった。 そこで 夫が「ピカピカ」の椅子を チェーンソーで ざっと作った。 脚は松の木で 座る所は杉。 去年の暮れに 隣の集落の神社から 貰った松の木。 80年近くの年輪を重ねた松は 想像以上に 沢山の材がとれた。 まずは ベン…

チャックの畑レポート

29日 雪が まだ残っていた頃。 チャックは友達の助っ人と 雪を掘り起こし 土を耕し種を蒔いた。 腐葉土と 牧場から買った 牛糞を鋤き混んだ 栄養たっぷりの土。 久しぶりに畑を覗いたら 豆は芽を出し 蔓が空に向かって 伸びていた。 白い布で覆われた畝。 …

山桜

午前9時 雨の朝 慌ただしく車を出し 細い山道を くねくねと下る。 山桜の淡いピンク 若緑の樹々 赤い芽吹きの葉っぱは すぐに緑に変わるだろう。 朝もやが 山肌を登って行く。 急ぎの私も 思わず車を止める。 「どう見てよ、 たった一週間程のこの姿」 誰彼…

山菜ナムル

椎茸 ハコベ ツクシ 葉わさび 三つ葉 「ライフルマン」が栽培している椎茸 袋にたっぷりと貰った。 星のように小さな白い花のハコベ 一日で盛りが過ぎたかの様なツクシ 花壇に住み着いた葉ワサビ 自生の三つ葉。 三つ葉は玉子に刻んでいれて 綺麗な卵焼きに…

ヒメエンゴサク(姫延胡索)

「ヒメエンゴサク」と、言うそうだ。 原っぱの縁に 薄紫の花を揺らして 群れて咲いている。 見逃してしまいそうな 小さな花だ。 ヒメエンゴサクは 鎮痛、浄血の漢方薬。 淡い紫の花を愛でながら 根を捜す薬草摘みは 楽しい仕事だったに違いない。 今日は強い…

ヤブツバキ(薮椿)

赤いよだれ掛けの 石の地蔵さんが二つ。 その脇に 何百という紅い花をつける ヤブツバキの木が 枝を張る。 今年一番乗りの 花が咲いた。 黄色のめしべの奥には たっぷりとした 蜜がありそうだね。 ぽとり・・・ と落ちる紅い花。 それも 静かで美しいものだ。

図書館の裏(1)

午後3時 図書館裏 安曇川の堤に 何キロも続く 桜並木 サクラミチ。 風も吹かず 暖かく 川原の葦に飛び交う 名前も知らない鳥達。 道の駅もある 図書館の裏。 日曜日の今日 沢山の人が 桜の下をゆっくりと 穏やかに歩く。 一年のうち たった一週間程の贅沢。…

夜の原っぱは鹿のもの

うちの側に 広い原っぱがある。 雪が融けて 急に明るい景色に変化した。 去年に枯れた草も 渋い黄金色に見える。 緑の色が 日に日に輝いて 「春になったんだな」 と、心が躍る。 満月の時も 暗闇の時も 夜の原っぱは鹿のもの。 群れて草を食む。 餌付けをし…

文旦の砂糖漬

午後2時頃。 今から遊びに行ってもいいか と言う電話が知人からあった。 普段は 清水寺のすぐ側に住んでいる。 若い頃 私は一時期 清水坂(ちゃわん坂)に住んでいた。 その頃の清水坂はガランとして それは静かなものだった。 今は前が見えない程の観光客…

八朔の皮を炊く

翁谷 うちの北側の谷には 5つの治水ダムがある。 このダムのおかげで 谷がおとなしくなった。 さて、今日の谷。 ずっと降る雨と 雪解け水を集めて 眺めるに値する 清々しさだ。 まだまだ 空気は冷たくて 春一番を告げる オオイヌノフグリさえも咲かず。 朝 …

ほんの少しのイマジネイション

午後2時 川面から、林から 畑から、山から 水蒸気の靄が 上がり続けた今日。 折れた柵を直すべく 木を運んだり 寸法を測ったり。 仕事場を整頓して 掃除をした後の 沢山のゴミを燃やした。 川の流れに白い煙が重なる。 蕗のとうを3個採り フキノトウ味噌を…

「芽が切った」

ラッパ水仙 「水仙の芽が切った」 とチエコさんは嬉しそうだ。 この土地の方言。 「芽が出た」を「芽が切った」 「上の方」を「空の方」と言う。 「あなた」は「そち」だ。 そう ラッパ水仙の芽が やっと切れた。 水仙は毒があるので 鹿は食べない。 だから …

沢の水

ネコヤナギが群れている近く 沢の水が落ちている。 その音の楽しいこと! しばし立ち止まり 私は耳を大きくする。 まだ 雪の残っている山の村。 風の強い日 「おお、寒っ」 と思ったりするが。 でも 会う人は皆 「暖かくなったねぇ」と言う。 雪で折れた 惨…

ノラニンジン料理が決め手?

ケンジさん家の馬酔木 90才オチヨさん家のお嫁さんは 肝っ玉母さんだと思う。 その肝っ玉さんは この山の村、自然が大好きで 山野草の事もよく知っている。 フキノトウも味噌、佃煮にも加工するが さっと茹でて砂糖をまぶして 冷凍庫に保存。 ケーキに使う…

崖の穴

崖にポッカリと小さな穴。 誰かさんのお住まい? 雪の日も 雨の日も 月の輝く夜も この中は暖かくて良さそうだ。 枯れ葉を敷き詰めたその上で 「フー、フー」と寝息をたてて 気持ち良さそうに 眠っているの? 誰かさん。 穴をじっと見つめる私を 中から見ら…

山間の一日

午後2時 見惚れる程の 清らかな川だ。 雪解けの 豊かな水の速い流れ。 川の深みは翡翠色。 石にぶつかれば それはサイダーの様に 泡立つ。 弾丸の様に 川面を真っすぐに飛んできた カワガラス。 直角に曲がって そのまま弁天谷を遡って行った。 キセキレイ…